人生のどん底から女将を救ってくれたのが、「重ね煮」でした。

支配・抑圧・いじめ・裏切り・自分が嫌い・羨み・妬み・嫉妬・人と比べる…

以前の女将は、自分の中にある負の感情を「傷つくのが嫌だから」「良い人に見てもらいたいから」蓋をして感じないようにしていました。

にもかかわらず、人生の半ば、ある経験からウツに。しばらくの間、何もできず寝たきりになってしまいました。身体中が放心状態。食べても味がしないし、感情も動かない。もちろん家事なんて出来ない状態でした。

しかし、寝たきり状態からは何とか抜け出せたある日のこと。偶然出会った方から、重ね煮の巨匠、船越康弘先生の重ね煮料理のイベントに誘われ、氣がついたら「行きます」と言っている自分がいました。外出などとても出来る状態ではなかったのに・・・何故即答したのかわかりませんが、今から思い返すとまるで何かに導かれたような感覚です。

そして、イベント当日。船越先生のお料理を一口食べてみた瞬間、「美味しい！！」と身体が悦び、味覚が戻ってきたのです！まるで炭酸がぷちぷちっと弾けるように、細胞の一つ一つが、「嬉しい！嬉しい！嬉しい！」と叫んでいるような感覚でした。今でも、”食べられることの幸せ”や”食べることを楽しむ大切さ”が心に沁み渡ったこの瞬間を昨日の事のように感じる事が出来ます。

その日を境に、身体が整い、心が整っていき、どんどん元氣になっていきました。この経験から、以前の私のように元氣を失っている人にこれを伝えなければ、という想いを抱き、２０１５年カフェを借りて料理教室を、２０１７年からは自宅で「笑顔の重ね煮料理教室みなみな」を始めました。また、「女将の重ね煮を食べたい」というリクエストをいただき、２０１９年「ゆるゆるカフェ　そら・空・宇宙」をオープンしました。

そんな想いで経営してきたカフェと料理教室ですが・・・2024年8月いっぱいをもって一旦休業します。認知症の母を自宅介護すると決めたからです。

その決断は、不思議なくらい突然に自分の中に湧いてきました。心から母を愛しむ氣持ちが溢れてきたのです。

仲の良い母娘だったから？
いえいえ、小さい頃自分は母に可愛がられていないと思っていました。実際そう言われたこともありましたし。きっと愛情表現が不得意な母親だったのでしょうね。その母に、こんなにも愛おしさを感じられるようになったのも、重ね煮のおかげです。重ね煮がきっかけとなり、いろいろな事に氣付かされて行きました。

ありがたいことに、女将の料理を食べて下さった方々が、料理の味はもちろんですが、口を揃えて「癒された」「元氣になった」「心に沁みた」と言ってくださいます。

料理は愛と感謝です。
女将の人生を変えた重ね煮料理の並ぶ食卓を、休業するまでの１年間、全国各地の皆さんと囲み、愛を分かち合うことができたら幸せに思います。